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講義1.7 コンセプチュアル思考の定義

ここであらためて、「コンセプチュアル思考」の定義、思考スタンス、骨格となる思考フロー、基本となる思考スキルをまとめておきます。とくに5つの基本スキルについてはこれまで触れていませんが、第2部の実践ワーク編で順次説明していきたいと思います。

〈コンセプチュアル思考の定義〉 繰り返し述べますが「コンセプチュアル思考」についての一般的な定義はまだありません。本サイト『コンセプチュアル思考の教室』なりに表現するとこうなるでしょうか。

〈4つのスタンス〉 コンセプチュアル思考の構えは次のようなものです。

〈3つのフロー〉 コンセプチュアル思考の骨格となるのは、「π(パイ)の字」思考プロセスと呼ぶ次の3つの流れ。

〈5つのスキル〉 コンセプチュアル思考の基本的技術は次の5つ。

1番目の「定義化」は、端的に言うと「〇〇とは■■■である」と表わすことです。

例えば、あなたは「仕事とは■■■である」「事業とは■■■である」「成功とは■■■である」「幸福とは■■■である」「成功と幸福の違いは■■■である」……といった形式で、ものごとについて自分なりの簡潔な定義ができるでしょうか。物事の本質を見抜き、それを的確に凝縮してとらえる技術を磨くことが「コンセプチュアル思考」の目的の一つです。

2番目の「モデル化」は、物事の仕組み(構造や関係性)を単純化してとらえ、図的に表わすことを言います。

例えば、「粋(いき)」とはどういうことでしょう。粋とはおおむね、「あかぬけた色っぽさ・かっこよさ」の意味で使っている言葉ですが、それを構造的に図化してみせた人がいます。

右の図は、哲学者の九鬼周造が1930(昭和5)年に著した『「いき」の構造』(岩波文庫)で提示したモデルです。「粋」などという、曖昧きわまりない概念をよくぞこのような姿で示せたものだと感服します。 本講義では、概念を図的に表現する形式を9種類に分け、解説していく予定です。

3つ目の「類推」は、例えば物事Aと物事Bの間に類似性を見出し、その似ている点をもとにして何かをおしはかることです。論理用語では「アナロジー(analogy)」と言います。コンセプチュアル思考に強い人は、物事Aで引き出した本質を物事Bに適用することがうまい人です。

また、比喩表現も類推のひとつです。複雑な物事を何か簡単な喩え話にしたり、たくみに喩えられた表現を豊かに解釈できたりするのも、コンセプチュアルな能力が鍛えられてこそです。

4つ目の「精錬」は、概念を研ぎ澄ませていくことです。例えば、ウォルト・ディズニーは「公園」という概念を精錬させて、「テーマパーク」というものをつくり出しました。また、ソニーは「カセットテープレコーダー」という概念を精錬させて「音楽を外に持ち出す再生専用機『ウォークマン』」という新しい概念を生み出しました。

本講義では、物事のとらえ方・コンセプトを精錬する方法として次の6つの方法を解説します。―――「1.結合・分離」「2.視点の移動・創出」「3.ものさし変更」「4.置き換え」「5.研ぎ澄まし」「6.喩え」。

最後の5番目が「意味化」です。「コンセプト|concept」とは、〈cept=受け取ること〉の語根が示すように、物事の本質を抽出し、それが何であるかをつかむことでした。物事から意味をつかむことほど難しいものはありません。

目の前の仕事から、どう意味や価値、使命を掘り起こせるのでしょう。あるいは、あなたが組織のリーダー・マネジャーであるなら、集団が共有すべき「ビジョン」や「クレド」「バリュー」といったものをどう描き掲げられるのでしょう。こういったところにもコンセプチュアルな思考力は求められます。

〈概括イメージ〉 コンセプチュアル思考を概括するイメージは「ハンモックモデル」です。

「抽象化」と「具体化」という2本の樹が左右に立っていて、そこに「概念化」というハンモックが掛かっている様子です。

ハンモックという網で包まれるのが「コンセプト(concept)」。「コンセプト」のおおもとの意味は「つかむ・内に取り込む」です。また、コンセプトは一応「概念」という訳語ですが、よくよく考えていくと、観念や信念、理念とつながっています。

図の上下には地面と太陽を描きました。「事象・経験・多」という地面では有象無象のことが起こっていて、ふと高く空を見上げれば「本質・理・一」ともいうべき太陽がさんさんと輝いている、そんな様子を示しています。

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